桐ノ院整体院

浮気どころか不倫だぞと罵られ隊

2022.9.20

NEWSのツアー日程が発表になったとき、大好きなフォロワーさんがLINEをくれた。

「仙台のオーラスに梓さんと一緒に行きたいので、申し込んでいいですか?」

 

チケットの申込みが4枚から2枚になったから、NEWS担の友達の多い彼女はきっと他にも一緒に行ける人はたくさんいるのに、オーラスという一番大切な日の同行者に私を思い浮かべてくれたことが本当に嬉しくて、絶対一緒に行こうね!と約束した。

無事に彼女の申し込んだチケットが当選し、私は自名義の当たった9月のさいたま公演を終え、もう他のチケットは所持していないのでNEWSのコンサートについては彼女と行くオーラスを残すのみとなっていた。

 

NEWSのオーラスまで2ヶ月開くが、その間も私はめちゃくちゃ予定が詰まっている。この1年、全身全霊で追いかけてきた「夕闇に誘いし漆黒の天使達」というバンドのライブ予定が次から次へと入ってきたからだ。NEWSオーラスの11月27日まで、寂しさを感じる余裕もないくらい夕闇に会える時間が確約されていたから、私のオタク人生最高だな、と思っていた。

 

昨日9月19日、私はLINE CUBE SHIBUYA(旧渋谷公会堂)にいた。7月から始まった夕闇全国ツアーの最終日を見届けるためだった。

最高のライブ本編が終わり、アンコールを求める拍手をしていると、突然ステージの画面に浮かび上がる「重大発表」の文字。

 

日比谷野外音楽堂でワンマンライブ決定!という知らせが流れ、思わずマスクの中で叫び声を上げた。野音で!!ワンマン!!!夕闇が!!!!

 

バンドに疎い私でも、野音という場所でやれることがどれほど凄い事かはわかる。飛び跳ねて拍手し、大喜びしたのもつかの間、表れた日程の文字を見て血の気がひく。

「2022年11月27日(日)」 

 

あーーーーーーーそんな、そんなまさか、NEWSオーラスだよ、同じ日だよ、仙台だよ。かみさま!!!!

 

 

 

夕闇のライブに同行していた方は、夕闇ファンでありNEWS担でもあるので、終演後トリキでメガハイボールを飲みながら「現場かぶりどうしよう……(涙)」とグチグチ話を聞いてもらった。誘ってくれた子の気持ちが嬉しかったから仙台で彼女とNEWSコンに行きたい。でも夕闇のはじめての野音を絶対見届けたい。どうしたらいい?

彼女は私に言う。「梓さんは、夕闇の野音に行くべき人間だと思いますよ」

 

うんうん悩んで、ライブの余韻もあって全然眠れなくて、2時間ほど仮眠して目覚めたら案外頭がスッキリしていた。

 

あぁ、私は夕闇の野音に行こう、行かなくてはならない。

夕闇は普通のライブハウスだとチケットが瞬殺するが、1000人規模の箱だとちょっとだけ余る、そのくらいの規模感のバンドだ。

3000人入る野音という箱での初めてのライブを、できるだけ満員にして、その景色を夕闇に見せたい。その景色を私も見たい。日頃から大小関係なくできる限りの夕闇のライブに足を運ぶ者として、初めて来た人にもこの楽しさを体感してもらえるように全力で動いてその背中を見せたい。

それが今の私の使命だと思った。NEWSを誘ってくれた友人には誠心誠意あやまろうと思った。でもきっと彼女はわかってくれるな、とも。

 

退勤したら彼女にメールをして、自分の気持ちを伝えよう……と考えながら1日仕事をする。退勤直前、帰り支度をしながらTwitterを開くと、数人だけフォローしている夕闇ファンの方の様子がおかしかった。

 

「減る」「やめる」「嘘」「スリーピースになるの?」

 

流れてくる不穏な単語ですぐ察してしまう。なんたって私は、NEWSが4人から3人になるのを経験してきた。いや、でもまさかそんな。だって昨日あんなに最高な、この世の幸せの頂点みたいなライブを見せてくれて、あまりにも幸せすぎて余韻で眠れないくらいの多幸感を与えてくれた人たちが、その人たちの誰かが、いなくなるなんて、そんなわけない。

 

何があったの?と呟いたらフォロワーさんが、ファンクラブからのメールを見るようにと教えてくれた。なるほどメールか……とアクセスしようとした瞬間、メールの通知が届いた。

 

 

ギターの千葉ちゃんが11月27日の野音をもって脱退するというお知らせ。

メールには、千葉ちゃん直筆のメッセージが添付されていた。

 

 

なんたってYouTuberなので、いや動画の企画では?ドッキリでは!?と言っている人もいた。でもジャニオタの私は知っている。動画に先行してFC限定で配信されるこんな直筆メッセージが、ネタなわけないことを。

なにより、こんなことをして「ドッキリでした〜」なんてオチをつける質の悪いYouTuberみたいなことを、彼らがやるわけがない。と、夕闇というYouTuberのファンとしての私も痛いほど理解していた。あの人たちは、そんなシャバいことはしない。ゆえに、これは本当のやつなのだと。

 

 

立っていられないほど動揺し、全身から血の気という血の気が引く。電車の中でもボロボロ泣いているおばさんの周りにいた人はさぞ恐怖だったろう。

震える手で動揺のツイートを繰り返しながら帰宅していると、NEWSのオーラスに同行するはずだった彼女から一言だけLINEがきた。 

 

「梓さん、11/27は夕闇優先したかったらそうしてね」

 

―――たまらず電話をかけた。やさしい声を聞いたら声が出ないくらい泣いてしまって、ごめん、ごめんね、私は夕闇を見に行かなければいけなくなってしまった、最後の姿は見なくてはいけない、どうしても。と伝えたら、うん、うん。とただ頷いてくれて、やっぱり泣くしかできなかった。

 

そのままの勢いで号泣しながらメンバーからの発表動画を見た。

後ろ向きな脱退ではないこと。夢があってそのためには二足の草鞋では難しいこと。やりたい音楽のジャンルも少し違うこと。

理由はどれもこれも納得でしかなかった。これからの人生のキャリアを積むために20代の若いうちにかじを切る、しごく真っ当すぎてぐうの音もでない。千葉ちゃんはギタリストでプレイヤーだけど、どちらかというとコンポーザーの方が好きなことなのだろうな、とは実際感じていた。

 

「悲しいけど、千葉ちゃんの夢を応援するよ」

 

………………なんて物分りのいいこと、今はとても言えない。他の夕闇ファンの倍くらい年をとっている私だが、とても大人になんてなれない。わかっている。納得している。千葉ちゃんが進みたい道にいってほしい、そうしてその道で成功してほしい。千葉ちゃんのことが大好きだから、千葉ちゃんが一番幸せなように生きてほしい。

心から、本当に心からそう思っているけど、でも私というひとりの人間の爆発する感情は「嫌だ!!!!!!!」でしかないのだ。

 

嫌だよ、いなくならないでほしいよ、お願いだよ。

 

千葉ちゃんの稀有な才能が本当に好きだった。他のメンバーはハチャメチャなようでいて実はかなり常識人なところ、天然で突拍子もないことをする千葉ちゃんの存在は貴重で他の誰にも真似できない魅力があった。エモい曲を作るのが得意なところが好きだった。超絶技巧ではないのかもしれないけれど、どこか哀愁のある音色のギターが好きだった。いつもポンコツでヘニャヘニャしているのに、演奏をしている時は異常にかっこよくて、時々ニヤッと微笑みながら音を楽しんでいる姿が好きだった。過去形じゃない、ぜんぶぜんぶ現在進行形で、大好きで、愛しい。

 

そんな千葉ちゃんとメンバーが一緒にいる姿がなにより好きだ。全員血液型が違っていて、性格も役割もバラバラで、バラバラだからこそそれぞれの良いところが最大限に発揮される4人。一緒にいればいるほどひとりひとりの魅力が輝く、奇跡のバランス。

 

その4人の姿を見られるのがあと2ヶ月? 

意味がわからない、意味がわからないよ。

嫌だよ、ずっと4人でいてよ。

 

きのう、渋谷公会堂を3階席まで満員にした光景を見て、泣きそうになった。

野音でライブをやるよ!と言われ、更に泣きそうになった。

これからこの4人はもっともっと、もっとデカくなる。もっと売れて売れてたくさんの人に曲を聞いてもらえる、きっとそうなる。そう確信した。

だからNEWSのオーラスを諦めて野音に行こうと思った。これからデカくなる4人の姿を見届けなくてはと思ったから。

 

だけど、その野音が4人を見られる最後だなんて、そんなの意味がわからない。

最後を見届けるつもりじゃなかったんだよ。

 

 

 

40年以上自分と付き合っている私は、自分のことをよく知っている。 

私はこの先千葉ちゃんがいなくなって3人になった夕闇のこともきっと追いかけるし、新メンバーが入ったらそのメンバーのことをきっとめちゃくちゃ愛するだろう。

夕闇を好きな気持ちはずっと続いていく。3人となったNEWSを今でも心の底から愛しているように。

今愛しているものがその形ではなくなってしまう悲しみは、いつか和らぐ。きっと残された夕闇3人が徐々に忘れさせてくれる。

 

だから1年後の私も、夕闇最高大好きって言い続けている未来しか見えないし、今こんなに辛くて悲しくても結局幸せに楽しく生きていけるとわかっているのだ。

 

 

わかっているけど、だけど、今は。とてもつらい。

「ファンとして応援してあげなきゃ!」と強がることが「大人になること」と思われがちだけど、

「今のわたしはとてもつらい」

無理しないで、そういうことを素直に言っても良いんだよ、というのを私は大人として若いファンの方に言ってあげたい。

 

だってつらいじゃん、悲しいじゃん、あたりまえだよ。大好きで大好きで大好きなままで、全然誰のこともどこにも攻めるところなんてなくて、決断した千葉ちゃんのことも受け入れて送り出したメンバーのこともなんならもっともっと好きになってしまった。全部仕方なくて、納得するしかなくて、そしたらこのつらいという感情はどこへ?

 

だから私はここに吐き出す。つらいよ、かなしいよ。

千葉ちゃんのいる夕闇が大好きだよ。

 

 

さみしいよ、千葉ちゃん。