NEWSを知らない君へ
君が子供の頃、「アイドル」という存在は一世を風靡していた。男の子も女の子も。
音大卒の君のお母さんはポップスにあまり興味がなかったけれど、当時は伝説的歌番組がオンエアされていて、それを何気なく流していたら君がモノマネをしながら歌うので可愛くて、ついついレコードを買ってしまっていたらしい。
wink、明菜ちゃん、少年隊、シブがき隊。
君は家のグランドピアノの下にもぐるのが好きで、いつもその狭いスペースで、アイドルの曲を聴いていた。レコードの針を落として、ピアノの下にもぐりこんで、歌詞の意味もわからないまま歌っていた。
数年後には音楽番組が廃れてしまい、いつしか君のお母さんも「流行りの曲はくだらない」と否定するようになった。従順な君は「そうなんだー」と思って音楽を聴かなくなった。
そこから20年、音楽には、とりわけジャニーズには縁がなかった。
その間、金八先生にクソほどハマって風間くんと亀梨くんと森くんを好きになり、翌年「加藤くん」「増田くん」「東新くん」も好きになった。ジャニーズの子というのは知っていたけど、知っていたというだけで君にとってはただの3Bだった。
数年後、会社員になった君は金八の再放送を見て、ハセケンこと加藤くんはどうやら後輩らしい、と知って、小説を書いているのを知って、それを読んだ。ああ、この人本当に後輩なんだな。この人のこと好きだなと思った。ぐぐったら、金八同級生のカズトシと同じグループになっていて驚いた。NEWSというグループらしい。しかし社会人数年目で心の死んでいた君はそんなグループ名もすぐに忘れる。
またしばらくして、あまりにも心が死んだので無職になってテキトーに転職してダラダラとテレビを見ていたら、女装をしていた手越くんという子の可愛さにうちのめされた。NEWSというグループらしい。しかし君はまたそのグループ名を忘れる。
その直後、スケートの羽生くんにメロメロになり、あらゆるスポーツニュースを録画していたら、なんだか爽やかなキャスターを見つけた。小山くんというらしい。ジャニーズのNEWSというグループらしい。しかしまたそんなことは忘れた。
そこから1年経って、君は唐突にNEWSと出合う。
幼き日々はいつもテレビの中にはアイドルがいて、いつもワクワクしていたことを思い出した。全然詳しくなかったけれど、潜在的にジャニーズは日常にいて、それなりに好意を持っていたのだ。そんな中で、ずっとグループ名もメンバー構成も知らなかった人たち。
友人から「金八に出てたまっすーが出てますよ」と見せてもらった過去の音楽番組の録画映像で、キャスター姿を数回見ただけだった「小山くん」が可愛く歌う姿に目を奪われた。次の日仕事をしていても、ふとした瞬間に小山くんの姿が眉間の奥の方に残像となって現れて、気がついたらアイドル雑誌を手に取っていた。
ちょうどそのタイミングでオンエアされた「リーダー会」と「コヤシゲ夜会」。
友人に「あの、4人になって最初のライブをレンタルして見てみたいんだけどなんというタイトルか」とメールをしたら、ジャニーズのライブDVDはレンタルがなくて買わなくては見られないことを教えてくれて、君のためにすぐそのDVDを買って家に来てくれたね。
そして君はNEWSを知り、戻れなくなった。
NEWSを知らない、2年前の君へ。
君がこれから好きになる人たちは、たくさんの壁にぶつかって、自らの居場所を必死に求めて、たくさんの武器を身に付けてたくましく大きくなった人たちだ。
ロールプレイングゲームのパーティのように。それぞれが別々の能力を磨いて、地味な敵やダンジョンも着実にクリアして、時には大きな敵を協力して倒して、経験値を積んで、パーティのレベルをあげていった人たちだ。
君はそれを支えてきたファンというプレイヤーの一員として受け入れてもらって、途中参加ではあるけれど、冒険の書を共にすすめていくことになる。
そして物語はいま、ある山場をむかえている。
この山場を乗り越えれば、またこの4人はレベルアップするだろう。
そしてかつての君のように、音楽番組で、あるいはバラエティで、あるいはチャリティー特番で、あるいは書籍で、ドラマで、雑誌で、ラジオで、初めてNEWSというパーティを知り、この冒険の書にログインする人々が現れるだろう。
NEWSを知らない2年前の君には到底想像もつかないことかもしれないけれど。
2年後の君はNEWSを知らない誰かに両手をひろげて「ようこそ!」と笑う。
その冒険の書には終わりがなく、毎日が新たな旅のはじまりだ。
最高に幸せで刺激的な旅が待っているから、楽しみにしていてね。