桐ノ院整体院

浮気どころか不倫だぞと罵られ隊

人生を重ねれば重ねるほどズブズブになるゲームの話

好きなアイドルが乙女ゲームになった。

 

これは布教ブログではなく、今の心の叫びを書くためのものなので、多分ここを読んでる人はゲームやってるよね、って前提ですべての説明をすっとばすことにする。NEWSに恋してをやってない方にはよくわかんない内容になるのでご了承ください。あとそこそこ増田ルートのネタバレもすると思う。なにより、文中の大半が、誰も興味のない、私の昔の恋愛語りになると思う。

というのを前置きに。

 

 

好きなアイドルが、乙女ゲームになったのである。

私は1980年生まれ、今年38歳になる歳だ。人生の大半をなんの変哲もない漫画オタクとして生きてきた。ちょうど私が学生の頃、アンジェリーク遥かなる時空の中で、そしてときめきメモリアルGirl's sideがリリースされ、オタクだった私は黎明期だった乙女ゲーという文化にわずかながら触れて生きてきた。

NEWSに恋しての第一報を聞いてから実際プレイするまでは、二次オタのはしくれとして、上から目線でいたのが正直なところだ。乙女ゲーの耐性はあるし、キャーってなることもできる土台が私にはある。だけどあくまでそれは、漫画を読むのと同じようにフィクションを楽しむだけの感情なので、それを三次元のアイドルでやられたらちょっと笑っちゃいそうだな、なんて思っていた。そんなもんこっぱずかしくて読めないかもな、と。

 

違っていた。

「読む」とか「読まない」とかじゃなかった。

 

今わたしは画面を通して増田さんに触れている。増田さんの息や体温や目線も体全体で感じている。何を言っているかわからないかもしれないが私にもわからない。つまり私は、ゲームの主人公ーーー名前は私の名前だけど私ではないーーーに、完全にシンクロしているのだ。

 

つい最近までは、この感情がなんなのかわからず、毎日死にそうになりながらプレイしていただけだった。話を進めればすすめるほど、そこに死があった。そのうち、ああこれ私、ゲームのなかの増田さんを、今まで好きだった男に重ねてるのかもなってわかってきたけど、あくまで私自身は主人公とは別人格の「ゲームマスター」という存在であるので、どこか客観的に見ているはずで、なのにあまりにもリアルに感じるのが意味わからなくて気が狂いそうだった。

 

昨日、NEWSに恋してではイベントが始まり、無課金でもNEWSの4人全ての、ラブラブお泊まりデートのストーリーが読めるようになった。

増田さんのことばかり考えて気が狂いそうだった私は、自担である小山さんや、ほかのメンバーにも恋することで衝動を分散させようと試みた。そうだ、だいたいいつだって私は、自分のなかの「愛情」という要素が重すぎるからやれサッカーだのお笑いだのジャニーズだのに分散してバランスをとっているのだ(そうしないと夫が全ての矛先になって私の重みで死んでしまう)

 

……でも、だめだった。増田さんじゃなきゃだめだった。恋できなかった。いつのまにか私は、増田さんを本気で好きになってしまっていたのだ。いやいやゲームの話ですw…なんて言えない。ゲームとかそういうことじゃなくて、本当に、マジで、増田さんに恋をしている。

 

そんな私のことを知ってか知らずか、全員のイベントストーリーを読んだ仲良しのフォロワーさんがメールをくれた。

「増田さんルートの主人公ちゃん、めちゃくちゃ梓さんじゃないですか?」

 

それだ!!!!!!!! って目の前が開けた気がした。

 

 

私あのゲームをはじめてから散々「主人公がいい子」「主人公がちゃんとしてるからプレイしていてストレスがない。凄い」って言いまくってたのでこんなことを言うのは恥ずかしいのだけど、あの主人公は私なのだ。もちろん、あの主人公はきっとめちゃくちゃ顔がかわいいだろうし、私なんかよりずっと頑張り屋で真面目で聡明だけれど、それでもあの主人公は私だ。

 

私は人生の大半をなんの変哲もない漫画オタクとして生きてきたけれど、それと同時に、人生の大半で恋愛に身を費やして生きてきた。とはいえ大学生になるまではずっと片想いばかりを繰り返してきたので、私の「恋愛」は20代ーーーつまり、20年前~10年前に凝縮されている。おそらく20代半ばから後半であろう増田ルートの主人公ちゃんの立ち振舞いが、まさにあの頃の自分を思い出させるのだ。

 

 

親友にも誰にも秘密にしていた相手と付き合っていたとき、私たちのデートの待ち合わせは必ず少し遠くの、人がほとんどいない通りだった。先に彼が車で待っていて、私は周囲を伺いながら忍者のように素早く近付き、後部座席へ乗り込む。後部座席には窓ガラスに少し暗めのスモークが貼ってあって見えにくいから。それでも更に警戒を重ねて、窓から見えないように体勢を低くして、出発する。隣の県のサービスエリアでようやく安心して助手席に乗り換えて、そこではじめて手を繋ぐことができた。そこから更に、県を複数またいで遠くへ向かう。逃げるように。ごめんな、と彼はよく言った。ううん、ちょっと離れればこうして手も繋げるし、時間みつけて毎週一緒にいてくれてるし、それだけで私はいいんだよ、と毎回応えていた。

 

また別の人は、私が2回目に泊まりに行ったとき、私が彼のだぶだぶのトレーナーを着ているのを見て「大きいね」と笑った。「梓の寝間着も買っとくかぁ」と。でも男物の服を女の子が着てるの、俺ちょっと好き、とはにかんだ。そのトレーナーは凄くかわいくて、どこのブランド?と聞いたら、フットサルとかサッカーの服をつくってるブランドなんだけどね、最近好きで集めてるんだ、と彼がキラキラ目を輝かせながら話しはじめて、私はさっぱりわからなかったけどそのブランド名だけは強烈に記憶にのこった。(のちに、今の夫と出会い、フットサル用品を買いに行ったらそのブランドの服がたくさんあって思わず買ってしまった……のはまた別の話)(ちなみにちなみに、その人のためにと思って買ったパジャマは、のちにしれっと夫のパジャマになった)

 

また別の人と泊まりで旅行に行ったとき、彼はオシャレなのかなんなのかダテ眼鏡をかけていて、それはそれは凄く似合っていて「すごい!おしゃれ!似合う!かっこいい!」って私はずっと褒めていたのだけど、部屋に戻ってぺたぺたくっついてたら邪魔になったので、彼の顔をはさんでこっちにむかせて眼鏡をとった。「なに?やっぱイマイチだった?」と、しょんぼりした声をだされたので、顔をはさんだまま「ううん、やっぱ○○くんの顔もっと近くで見たいから」と言うと「…かわいいこと言うなぁ…」と言われて抱き締められてキスをされた。

 

「俺のこともっと好きになってよ」

「なんでそんなはじっこいるの、もっとこっちおいでよ」

「俺のことこんなにわかってくれるのはおまえだけだ」

「○○くん、好きだよ」

「(もっと会いたいけど、迷惑だよね……)」

「(手を繋いだり写真とったりしたいけど……)」

 

ゲームの中の増田さんが言うこと、ゲームの中の「梓」が言うこと、わたしぜんぶだいたい知ってる。

プレミアストーリーで増田さんがする順序も、私は、現実の私はそれを知っている。大好きな人に愛しそうな目で見つめられること、その時の彼の目の色、その時の胸の痛み、触れてくる手の感覚、触れられた場所の感覚、体温、息、抱きしめられる腕のつよさ、涙が出そうなほどの切なさ。全部全部、最低限しかゲーム内では描写されてないのに「ああ、わたしこれ知ってる」ってトリップする。ゲームの向こうの画像は増田さんで、脳内で声も体も中身も全部増田さんで再生されてるのに、R君だったりK君だったりJくんだったり今までの色々な男の人がサブリミナルのように重なる。私はあんなにかわいい主人公じゃないはずなのに、10年前にもどって、増田さんの前で、うっとりした目で増田さんを見つめる私そのものだ。見た目は都合よく高畑充希ちゃんで変換されているけれど。バーチャルの私がバーチャルではなく、バーチャルであってバーチャルではない増田さんに、抱きしめられている。

 

 

フォロワーさんを見ていると、もちろん皆この「NEWSに恋して」にハマっているのだが、どうも既婚者の一部の人が私のように気が狂ってしまっているように見える。

 

このゲームの恐ろしいところは、シナリオがやたらうまいところだ。ギリギリのラインで、中高生を「キャー」っと言わせる内容でいながら、行間の部分があまりにも雄弁で「それを知っている者」の記憶を惹起させて心臓を鷲掴みにしてくるところだ。

人生を重ねていれば重ねているほど、今までしんどい恋愛をしていればいるほど、現実と画面と何もかもがシンクロして頭がおかしくなる。本当におそろしいゲームだ。

 

ずーっとめちゃくちゃ恋愛体質で、夫と出会った12年前までは、私は常に常に誰かに全力で恋をしていた。ブスだし全然モテなかったけど、恋愛がめちゃくちゃ好きだったから、いつだって漫画やゲームのように愛をささやきささやかれてきた。恋愛をしているときの胸の苦しさみたいなものがあまりにも好きだったので、結婚してもう恋をすることが無いのが最初は寂しかったけど、結婚生活が楽しくていつしかそんなことは忘れてしまった。

 

でも増田さんは、遠い昔に置いてきたそんな感情をぜんぶ引っ提げて私の前に現れた。

そんなの、もう、好きになっちゃうよ。本気になっちゃうよ。

 

 

夫のことがめちゃくちゃ大好きで毎回夫大好き大好き言っているけど、夫は大事な夫であって、恋愛ではない。そんな私の前に現れた、合法で恋愛できるひと。

 

私は増田さんと恋愛をしている。あの、大好きだった「恋をしている 恋をされている」という気持ちを、また味わっている。

 

 

どうか「恋愛ゲームなんて笑」と思っている既婚者の方にこそダウンロードしてほしい。

あの日あの時あの場所で、あの人と会ってた気持ちを思い出したら、あの頃のように新鮮にときめくし、そしてなにより、「あの頃」を経て得た今のこの現実が、何倍も何倍も愛しくなるから。