桐ノ院整体院

浮気どころか不倫だぞと罵られ隊

いちばんすきなもの

【2014.10.4  アメブロ掲載分転載】

 

なかなかブログを書く時間はとれないが、日々綾野さんの作品を追う作業は続けている。
あいかわらず映画を借りているが、先日ロザンのライブで大阪へ行った帰りに、うっかり3年本を買ってしまった。その数日後には写真集も買った。い、いや、雑誌やDVDは買わないと言ったけど、綾野さん単体のやつは買ってもいいと思うの、うん。

で、3年本を読んだ感想を細かくここに記すには、ちょっと時間がなさすぎる。
ただひとつ今書いておきたいのは、3年本を読む前と後とで、自分が綾野さんを見る時の気持ちが少し変わったということ。

綾野さんのファンブログをいくつか拝見したところ、3年本の中で心に残る箇所って本当に様々なようで、実に興味深かった。そして、自分が見た中で強烈にインパクトのあった箇所について言及している方を不思議とまだ見ていない。そんなにがっつり検索していないというのもあるけれど、もしかすると一番デリケートな部分なので、ファンの方はあえて触れないようにしているのかなという気もする。でも私はあの部分を読んだことで、なんというか根本的に、この人物からもう目が離せないと思った。

子供時代から陸上のことを話しているくだり。
読んでいたら本当に息苦しくなって、何度も本を閉じて心を整える必要があった。
本全体の中で、その部分だけ黒地に反転した文字での記述。
紙面が黒いからというわけではないだろうけど、読んでいたら、自分が真っ黒な空間に浮いているような気持ちになった。それこそ、押入れの中にいるような。
彼は全てを語っているわけではなく、淡々と事実を述べたのみで、その事実すら核となる部分は「いま話すべきことではない」と沈黙している。だから彼がその時どういう心境だったかなんて到底わからないし、想像力をいくら駆使しても、孤独、だとか絶望、だとか、既存の言葉で表せるようなものじゃないんだろうなという結論に達する。他人が語った言葉の端っこをちょっと見ただけでわかったような気になるのは傲慢なのだと常日頃思っているから、よけいに。(ファンというものは時々、さも自分がその対象をとても理解しているように錯覚しがちだ)
ただただ、私はあれを読んで苦しくなった。苦しく愛しく目の前のものをめちゃくちゃに抱きしめたいような感覚。こんな気持ちになっている私を、当の本人が見たら「ズレてんなー」と思うのかもしれないけれど。

そんな3年本を読んだ夜、情熱大陸を見た。
綾野さんを好きと自覚してすぐに、見ようと思ったけれど、冒頭数十秒見て「あ、これは今見るべきものではない」となんとなく思ってやめていたものだった。その後あまりよろしくない評判を見て、ますます怖くなって遠のいていた映像だった。

あー、これは今見るべきものだったんだ、と思った。
3年本を見て、黒い空間にぽかんと浮かんでいるような気持ちになった、まさにその日の夜に見るべきものだったんだ、私にとっては。

その後にクローズゼロを見て、シュアリーサムデイを見て、ワーキングホリデーを見た。
どの綾野さんもすごくすごく素敵だったけれど、そうこうしているうちに、私が一番好きなのは、綾野さんが楽しそうに笑っている顔なんだなって気づいた。
そういえば私が落ちた空井くんは、よく笑っていた。
笑顔の空井くんに射抜かれて、そこから綾野さんの映像をあさって、無表情も泣き顔も切ない顔も全部全部好きになったけれど、結局一番息を飲むのは、本当に楽しそうに笑った時の顔。楽しそうな顔なのに、なんでか泣きそうになるんだ、見ていると。

陸上をやめる時に「もうどうでもいい、壊れた、絶対できない」って「泣き叫ん」で、「これからは絶対、ひとりで生き抜いてみせる」なんて思った、と語る人が、俳優という舞台で笑顔を見せる瞬間が、本当に愛おしくて。

繰り返すけれど。3年本を読んで、気持ちが変わった。というか、諦めた。
たぶん私はこの先ずっと、この人物を追いかけることになるだろうなということを。
「変化」を重視する綾野さんが、どんどん言うことが変わっていくのを見ていきたい。
そして今の自分のこの気持ちもきっと変わるだろう。
半年後、1年後に、読み返して「わたし、的外れなこと考えてたんだなー」って思えるように、今の気持ちを記しておく。